日本トイレ協会メンテナンス研究会公式HP

報告レポート(126回)





2008年12月15日(月)15:00〜18:00
会場:INAXダヴィンチ京橋ビル(東京都中央区)

■「YOSAKOIソーラン祭りのトイレ対策 〜イベント開催時の市民参加型のトイレメンテナンス〜」
講師:白倉正子

(アントイレプランナー代表/メンテナンス研究会幹事)
   
 今回は、非日常時であるお祭りの時のトイレ対策を、10年連続で専門的に行なった現場エピソードを、アントイレプランナー白倉正子さんに伺いました。仮設・公衆・ビルと、複数のトイレを扱い、市民ボランティアの清掃協力にも取り組まれたそうです。



1、自己紹介
 私は「トイレと経営学」の卒業論文を書いた時、トイレの専門家になりたいと思い、22歳でトイレ専門企画会社「アントイレプランナー」を創業しました。12年が経過し、イベント企画・商品開発・教育事業・講演・執筆・マスコミ対応などをさせて頂いております。今回お話する「YOSAKOIソーラン祭りのトイレ対策」は、今年で10年目になりました。



2、YOSAKOIソーラン祭りの概要とトイレ対策のきっかけ
 YOSAKOIソーラン祭り(以下:YOSAKOI)とは、「街は舞台だ!」を合言葉に92年に長谷川岳さんを中心とする学生5名でスタートした祭りです。鳴子を持ってリズミカルに踊るこの祭りは、初夏の北海道を代表する大イベントに急成長しました。観客動員数は216万人(2006年)になりましたが、急成長の裏側ではインフラ整備が追いつかず、トイレ対策を依頼されたのが99年の事でした。
 状況調査の結果、トイレが不足(特に女子トイレ)・日中〜夜の滞在型である・子連れや車椅子利用者も利用する・上下水道は完備している等…が分かりました。そこで「美しい祭りにふさわしい、美しいトイレでおもてなしを」をモットーに、メイン会場(大通公園内のみ)でトイレ対策を実施しました。



3、8つの対策とその効果
 では具体的に紹介します。

(1)トイレ数を増やす(30基→63基へ)

 大通公園内の公衆トイレ3か所の便器数を数えたら30基しかありませんでした。そこで仮設トイレを3か所に設置し、周辺ビルにもトイレ開放をお願いし、63基に増加しました。また関係者向けにトイレマップも作成しました。


(2)市民ボランティアを各トイレに配置

 市民ボランティアの方々に各トイレに立って頂き、トイレ前の誘導・清掃・展示物の補強&取外し・忘れ物の管理・危険物の有無の監視などをお願いしております。トイレ利用者からは「人がいるので安心」「荷物を持ってもらって嬉しかった」など好評を頂き、ボランティアご本人様からも「最初は抵抗があったが、案外やりがいがあって楽しかった」と感想を頂きました。


(3)トイレ管理体制の確立

 責任者の私一人では、すべての問題には対処できないので、副リーダーを設置し、現場の意見を迅速に吸い上げるよう、連絡体制を作りました。また専門技術を要する問題は専門業者と連携しました。最近ではノウハウが溜まり、簡単なトラブルなら現場で対応可能です。


(4)看板を増やし、効果的に誘導する

 せっかくトイレを増やしても、その存在を知らしめないと、利用者が1か所に集中してしまったり、トイレを探す方が増えてしまいます。そこで看板を豊富に取り入れました。具体的には、「女性優先トイレ」と張り女性トイレを増加した・イラストで表現する・ベビーベットや車椅子用トイレがない仮設トイレには、「○○m先のトイレにあります」と告知しました。また看板そのものを毎年使用できるよう、普通に印刷した紙をラミネート加工し、濡れたり汚れたりしても繰り返し使えるようにして、経費削減&環境対策をしております。


(5)清掃道具の充実

 靴の泥や粗相した排泄物などで床が最も汚れるので、特に床用の道具を多く揃えました。また道具はボランティアの方の「こんな道具がほしい」という意見を尊重しています。トイレブラシやホウキ&ちりとり・ゴミ袋などの消耗品は100円ショップで購入し、企業からの無償道具提供も頂き、経費削減しています。祭り前には道具の使い方を丁寧に説明し、より理解ある作業環境を提供しております。


(6)トイレットペーパー(紙)の設置

 紙の設置していないと、トイレ内で紙を探す時間を要するので、回転率を上げたり、詰まりが起きないよう、紙を設置することにしました。普段の公衆トイレには、ペーパーフォルダーそのものが無いので、当日だけ両面テープで設置しました。また紙の消耗数を記録し、翌年の発注時に役立てました。


(7)時代の変化に対応&防犯対策

 洋式トイレをお求めになる方が増加したので、仮設トイレに洋式トイレを増やしました。 また2000年の開催時に、心無い犯人による爆発事件がゴミ置き場にて勃発しました。そこで、トイレ内の不審物の監視を強化しました。また硫化水素による悪臭騒ぎ(イタズラ)が起きないよう、ゴミ袋を小さくし、死角を無くしました。

(8)トラブルの早期対応

 代表的なトラブル対策を紹介すると、1、車椅子トイレの非常ボタンを水洗ボタンと誤って押される→水洗ボタンに「水→」と大きく表示し、非常ボタンを目立たなくさせた 2、ペーパーフォルダーが外れた→現場にガムテープを渡しておき、補強して頂いた 3、詰まりや水洗器具の異常が起こった→とりあえず「使用禁止」の看板を張った…という具合です。ボランティアとのコミュニケーションには、携帯電話をトランシーバーのように活用するケースもあります。




4、10年の歴史の中で・・・
 トイレ対策のために、トイレの専門家を投入したことが珍しかったらしく、地元新聞に掲載されたこともありました。また自分自身の2度の出産で現場に行けない時には、代理人にマニュアルをお渡しし、電話での遠隔操作を成功させました。これらによりイベント開催時のトイレ対策の基礎が築けたと自負しております。
 まとめると、1.担当者の一貫性によるノウハウの蓄積が大事、2.市民ボランティア力とコミュニケーション力が効果的に働く、3.観察力と対応力が求められる…と感じました。
 今後も頑張りたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。



5、質疑応答
Q1.水撒き清掃は、トイレ内の床に靴の裏の汚れが残るので止めた方が良いのでは?
A1.ひどい汚れには、モップやスポンジを濡らして清掃せざるをえません。残った水は、便器内へ放流しています。

Q2.バイオ式トイレを採用しないのですか?
A2.排泄物の処理能力に人数制限があり、予算の都合上からも、断念しました。

Q3.仮設トイレはまだまだ改善が必要ですね。
A3.メンテナンス研究会で、メンテしやすい仮設トイレを考えられたら面白いでしょう。

Q4.お祭り時のトイレにおける最重要点は何ですか?
A4.YOSAKOIの場合は、「回転率」だと思います。

Q5.観光地のイメージアップに一役買う対策はないでしょうか?
A5.以前は「このトイレはボランティアの方が清掃しています」という貼り紙をしていましたが、全トイレブースに張る手間が掛かるので、協力者が増えたら再開したいです。

Q6.5日間の開催で200万人以上の来場があるのであれば、トイレ利用者からトイレ維持管理協力募金をつのればどうですか?
A6.以前、トイレブース内への広告など考えましたが…。今後検討します。



6、感想
120枚以上のスライドを用意していただき、とても十分した内容でした。ひとつのお祭りのトイレ管理を、こんなに組織的に行なっているとは驚き、感動しました。また既に10年以上のトイレ管理ノウハウがあるとのことで、そのマニュアルを見たいと思いました。ありがとうございました。

(株式会社アメニティ 内田康治)


講師の白倉正子さん。2時間も熱弁して下さった。

全国から踊り子が結集し、激しい音楽で元気に踊る姿は圧巻!

ボランティアの方がトイレ管理すると一体感が生まれる

看板だけで30種類ある。用途に応じて掲示を変えている。

現場の声に耳を傾けるのが、メンテナンスの原点だろう。

現場で起きたことは翌年に生かすことでノウハウが蓄積される

YOSKOIのトイレはこの笑顔が自慢だ

祭りのトイレ対策は新鮮だったよう。仮設トイレは今後の課題になりそうだ。


トップへ
トップへ
戻る
戻る