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報告レポート(118回)


2007年11月19日(月) 
 新宿Lタワー26階 TOTOプレゼンテーションルーム


■「環境にやさしい洗剤は?」
   講師:株式会社サンワード取締役研究開発部長 五味正 氏


■1.環境にやさしい洗剤
 1)洗浄後の廃液はどこへ
トイレを洗浄した廃液は、洗浄後、公共下水道に流れ、その後川へと流れ
ていきます。公共下水道への排水については、公共水域の水質保全と下
水道施設の維持管理などの観点から各都道府県条例で下水道基準が決
められています。

2)環境にやさしい洗剤とは
  まず第一番に下水道排除基準値を超えない洗浄剤が挙げられます。
その他、毒物劇物取締法、PRTR報告義務物質、環境ホルモン嫌疑物質
(ホルモンに異常をきたす。オスがメスになってしまう等)、シックハウス嫌
疑物質、有りん・無りんの有無(植物の栄養素になる。川や湖で藻が繁殖
してしまう等)、生分解性(バクテリアにより有機物"界面活性剤、石鹸"な
どが水と炭酸ガスに分解する)、蛍光染料の有無などが挙げられます。ま
た、包装容器の問題も重要な課題です。

3)洗剤の種類
 大別すると洗剤は、石鹸タイプと界面活性剤を主成分にしたタイプの洗
剤に分かれます。その他、ビルダー(酸、アルカリ)を主成分にした洗浄剤
があります。
@石鹸と界面活性剤タイプ、どちらが環境にやさしいか?
 石鹸を製造する原料は、動植物油脂や苛性ソーダ、苛性カリなどの天然
原料です。それゆえ、石鹸は人体に対し優れた安全性は得られます。し
かし、環境に対しては決して、優れた洗剤ともいえません。洗剤濃度を高
めないと優れた洗浄力が得られないことや、硬水ではキレート剤を使用し
ないと使えないなどが挙げられます。
 界面活性剤は、動植物油脂などの天然原料のほか、石油・ガス・石炭
からの合成原料を使用しているため人体に対する安全性には疑わしい原
料もありますが、近年の環境に配慮した界面活性剤は環境にやさしい製
品もたくさん開発されています。
A洗剤の適正濃度は、どのようにして決められるのか
  洗剤の適正濃度の決め方の一例として、次の方法があります。
 石鹸を主成分とした洗剤と界面活性剤系を主成分とした洗剤では、洗浄
力の関係で希釈倍率が大きく違います。それは、洗浄力が失われる洗剤
濃度が石鹸と界面活性剤では極端に違うからです。
 この洗浄力の失われる最小の洗剤濃度はミセル限界濃度で示されま
す。洗剤濃度は、最低でもミセル限界濃度より高い濃度で使用します。ミ
セル限界濃度(c.m.c)は、数値が低い方が、洗剤の使用量が少なくて
洗浄することができます。勿論、環境問題では、少ないほうが優位です。
c.m.c 
重量濃度(%)
石鹸 石鹸ラウリン酸ナトリウム 0.65
界面活性
界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム 0.17
ノニルフェノールEO 9.5モル付加物 0.006

B主成分がビルダー(酸、アルカリ)の洗浄剤の一例
 主成分がビルダーの洗浄剤は、一般に液性が強酸や強アルカリ性で
す。例えば一例として、塩酸系トイレ洗浄剤が挙げられます。塩酸系洗浄
剤は塩酸濃度によって劇物表示が必要です。通常販売しているトイレ洗
浄剤は、劇物表示の必要ない塩酸濃度が10%以下です。塩酸は独特の
煙と鼻を付く臭気で敬遠されますが、水酸化ナトリウムで中和すれば、食
塩と水になり極めて環境への影響が低い洗浄剤になります。しかし、塩酸
の塩素ガスは、金属を腐食させ、ウォシュレットなどの電子機器の回路を
短絡させることから使用が限られます。

2.水石鹸
 1)水石鹸の種類
 @化粧品or薬用
・化粧品許可:殺菌剤を含有しない石鹸または界面活性剤タイプの水石

・医薬部外品許可:殺菌剤を含有して薬用表示をした石鹸または界面活
性剤系の水石鹸
A汎用水石鹸の原料の違い
・石鹸タイプ:ヤシ油カリウム石鹸+キレート剤(EDTA-4Na)+(殺菌剤)
・界面活性剤タイプ:アニオン系界面活性剤+両性系界面活性剤+(殺菌
剤)

2)石鹸タイプと界面活性剤タイプの性能
 @ 性能および特徴
性 能 石鹸タイプの水石鹸 合成タイプの水石鹸
泡立ち
傷口への刺激
洗浄し濯いだ後の手のヌル付き
液性 弱アルカリ性 中性または弱酸性
水での希釈安定性
人体への安全性 ◎〜△
キレート剤含有の有無 有り 少ない〜ない
  
 A 水石鹸ディスペンサーへの影響
性 能 石鹸タイプの水石鹸 合成タイプの水石鹸
注ぎ口のつまり *1
金属部材への影響 *2
〇〜◎
  (評価基準: 優れる ◎←〇←△←× 劣る)
*1:一般には石鹸、洗剤の濃度に比例する(濃いと詰まり易くなる)
*2:キレート剤(EDTA−4Na)の影響大(真鍮を溶かす)


3、これからのトイレ洗剤
 1)ウォシュレットの普及に伴い、塩酸系洗浄剤から金属腐食ガスを発生
しない中性タイプのトイレ洗剤に替わっています。
@洗浄方法
最近はトイレの便器を人が擦り洗浄する洗浄方法から、擦らなくても洗浄
できる方法が考案されています。特に、便器内の水流の流れの改良や汚
染しても容易に洗浄出来る保護洗浄方法が考案されています。
  ⇒便器内に洗浄水が流れないところが無いことが大切。

A基本的な中性トイレ洗剤の処方例 
原料
配合
洗浄効果
キレート剤(金属封鎖剤) 5〜10 燐酸カルシウム、尿酸カルシウムの分解
界面活性剤 0.1〜5 汚れへの浸透、分散、再汚染防止
増粘剤 Trace 垂直面の液ダレ防止、
残り
(問題点) 
  ・キレート剤による材質への影響
  ・速攻的な洗浄(化学反応)には劣る
  ・生分解性の悪いキレート剤(EDTA)の使用における環境問題

2)特に清掃現場を悩ます問題(予防)
@男子用小便器下の石材床の変色予防
 尿の石材内部へのしみ込み防止剤を塗布する予防策。
 Aトイレ内に使用する材質
   例えば、トイレ内の床に大理石を使用している場合、トイレ使用洗剤
が使用できな
いので、大理石の使用は避けるべきである。
B洗面台、バスタブなどの材質
例えば、洗面台、バスタブの材質が大理石の場合、石鹸の垂れにより大
理石の侵食
が生じる。
C日常清掃の重要性
  日常清掃を怠り汚れが頑固に付着してから簡単に除去することは不可
能です。一部の清掃業者が簡単に除去できる"フッ化水素酸や酸性フッ
化アンモニア等"を使用することがありますが、陶器の上薬を溶かし艶を
無くし、汚れが付きやすくなるので絶対に使用してはいけません。

■4.その他(会場からの質問など)
 @油汚れを取り除くには、油に溶解する溶剤や低粘性の油を使用する
と、簡単に取り除くことができます。例えば、車のエンジンを分解したとき、
灯油やガソリンで洗浄すると、簡単にベトベトした油汚れが洗浄できます。
 Aホテルのトイレ・風呂場・洗面台などユニットバスを洗浄する場合、1
種類の洗剤で洗浄します。石鹸カスや燐酸カルシウム・尿石などを分解し
て、泡切れ性のよい洗浄剤が業務用の場合は好まれます。
B界面活性剤が開発されたのはドイツで、日本では昭和30年頃から洗
剤などに使われ始めた。
 C洗剤に使用する界面活性剤の選択は、汚れの種類によって決められ
る。例えば、油汚れの場合は、油の乳化に優れた界面活性剤を使い、泥
汚れなどの無機物の場合は、泥汚れを水に分散する効果の得られる界面
活性剤が使われる。しかし、汚れは、油や泥など複合物であるので、商品
を作るには、どちらにも効果の得られるように、異なった効果のある界面活
性剤を混合して造られている。
※洗浄力を高め、できる限り低濃度にしてあげる事が環境にやさしい洗剤
となる。
 D米国の洗剤で、pHが1〜2の強酸を素手で触れられる商品があるが
どのようなものか?
酸の成分の種類にもよります。また、溶液への手の浸漬時間は短時間で
はないですか。
例えば、コーラやジュースなども、かなりの酸性です。
 E手洗い用石鹸に薬用(殺菌剤)は必要か?
手に付いた雑菌を落とすには、殺菌剤に触れている時間・温度・濃度が影
響します。一般に手洗いで、数分間も石鹸で手を洗っている方を見かけま
すか。また、手に付いている通過菌を洗い落とせばよいといわれていま
す。潜在菌を落とす(殺菌)するには洗浄方法・洗浄時間・殺菌剤濃度な
どを考慮する必要があります。


■5.感想
 洗剤の講義は、化学用語が飛び交い専門的になりがちですが、五味さ
んは素人の私にも分かり易く解説をしていただきました。
私たちが日常使用する洗剤は、酸性・中性・アルカリ性を問わず、自然環
境に対して決してやさしいものではありません。しかし必要に応じ使用を
するのですから、適正量を使用するという事がとても大切です。
また濃度10%を超えれば劇物になる塩酸などでも、水酸化ナトリウムで
中和すれば食塩と水になり、極めて環境への影響も低くなるなど、トイレメ
ンテナンスで使用する洗剤のそういった知識も、覚えておかなくてはなら
ないと感じることになりました。
今後、洗剤メーカーには、自然環境にまったく無害でありながら、強力に
汚れを落とす「エコ洗剤」の開発を期待したいと思います。
(議事録:潟Aメニティ内田康治)

  

  講師の五味正さん


講師の話は分かりやすく、
参加者は熱心に聴講。



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