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報告レポート(第106回)

定例会の様子をレポートします。
 
2006年6月12日(月) 16:00〜18:00
  TOTOプレゼンテーションルームにて(東京都新宿区)

テーマ:「世界のトイレ快道を行く〜南アフリカ編〜」
     南アフリカの民族性が育てた自然環境保護と観光客への対応

講師:坂本菜子(坂本菜子コンフォート研究所代表
 
■1.南アフリカは「アフリカらしくない国」
 南アフリカ共和国に暮らす人々のルーツをたずねると、2つの先住民族
にたどりつきます。ところが、1652年にオランダ人が植民地をつくって以
降、フランスやドイツ、イギリスなどのヨーロッパ系移民が相次ぎ、さらにア
ジアからも人々が移入するにつれ、この国は"多民族国家"に変貌しま
す。
 こうして「アフリカで最もアフリカらしくない国」として世界に類を見ない独
特の民族と文化をもつようになった南アフリカは、自然や動物、環境を伝
統的な知恵でさりげなく守りながら、同時に観光立国としての地位もゆる
ぎないものにしています。

■2.観光地のトイレで感じた南アフリカらしさ
 サイモンズタウンという街の南端に隣接する静かな入り江は、野生のケ
ープペンギン保護区として知られています。ケープペンギンはアフリカ大陸
に生息する唯一のペンギンで、繁殖活動が盛んに行われているこの区域
には3000羽余りが生息しています。
 この保護区では海岸沿いにウッドデッキの遊歩道が整備されており直
接ペンギンに手を触れることがないためか、子どものペンギンも人をあまり
怖がらず親ペンギンの傍でゆうゆうと育っている様子。観光客もペンギン
たちの生活をゆっくり間近に楽しむことができます。自然体でなおかつ自
然環境へのきめ細かな気遣いに、私はうれしさを感じました。
 各観光地のトイレでも、ベビーベッドや大きなダストボックス、ナプキン
袋、消臭剤などに細やかな気配りを感じました。またショッピングセンター
のトイレでは、ヨーロッパに近い雰囲気はあるものの、アフリカの色彩や夢
を感じさせるこの国独特の壁面デザインが、強く印象に残りました(写真
1)。

■3、ケープのトイレには窓がある
 自然環境を愛する民族性が育てたトイレのもう一つの特徴は、何処のト
イレに入っても、窓があることです。自然の風が流れ、外の景色を楽しむ
事も出来ます。
 喜望峰を望む、ケープポイントの観光客用のトイレには、男性・女性トイ
レ、車椅子(障害者用)トイレにも、上げ下げ窓が設置されていました。よく
日本では一面タイル張りの広くて物寂しささえ感じるトイレもありますが、
ここでは上部3箇所にも窓が設置されていました。
 ベビーベットの置かれた横の窓からは、そよ風や光もふりそそぎ、さぞオ
ムツを替えるお母さんも赤ちゃんも心地好い瞬間を感じているだろうと想像
できました。

■4、木を豊富に使った窓のある、ワイナリーのトイレ
 ケープタウン市内から車で30〜40分のところにあるステインボシュに
は、ワイナリー(ワインランド)があります。数件を尋ね、ワインを試飲し、ト
イレを拝見しましたが、オーク(木の名前・町に並んでいるシンボル的存
在)の町と言われるだけあって、天井のデザイン、窓枠、扉に木が豊富に
使われていた。
 しかもどのトイレにも上げ下げの窓があり、自然光の入る、ホッとする空
間でした(ただ一つ小柄の日本男性には、小便器の位置が高くてご苦労
があったと聞きました)。

■5、アフリカ気分に浸れた「ママ・アフリカ」のトイレ
 「ママ・アフリカ」は、ケープ料理とアフリカ料理のレストランで、外観もイ
ンテリアも個性的でアフリカを充分感じられる場所です。店の外観はアフリ
カ色豊かなデザイン。それは店の周りに置かれている植木鉢・カウンター・
各部屋のインテリアの装飾、全ての食器にいたるまでアフリカデザインが
生かされていました。そればかりではなく食事の前にはこの地の風習で
「手洗いの儀式」が行われました。
 ここのトイレで驚いたのは、トイレの派手さです。3か所のトイレともアフリ
カの色彩デザインが思う存分使いこなされていて、個性あふれるデザイン
で、しかもやはり狭いトイレにも「窓」があったことです。

■6.テーブルマウンテンに設置された「エコトイレ」
 ケープタウンを一望できるビューポイントとして知られるのは、平らな頂上
が印象的な「テーブルマウンテン」。標高1086mの"岩盤"の頂上まではド
イツ製(?)の65人乗りロープウェイが運んでくれますが、それがなんとド
ーム型(円形)! しかも床が360度回転しながら頂上に向かうので、どの
位置に乗っても大西洋や街の風景さらには山の頂上までもが眺望できる
という"すぐれもの"でした。
 テーブルマウンテンは全体が国立公園となっており、150種類の植物や
小動物が生息しているとか。その1つで「ロック・ダッシー(Rock Dassie)」
と呼ばれる小動物に出会えたのは幸運でした。大きさ30〜40p、モグラ、
リス、ネズミ、ウサギ、ウォンバットを合わせたかのようなこの動物は、な
んとゾウの仲間と聞き、そういわれても納得のいかない不思議な容姿の
「ロック・ダッシー」も、岩の間から姿を現し観光客を喜ばせ、自然と共生し
ているようでした。
 それだけではありません。このテーブルマウンテンのトイレが実は「エコ
トイレ」でした。短時間の見学で詳しい観察は困難でしたが、ガイドさんの
説明によるとオガクズと微生物の使用による生物処理方式とのこと。日本
でもここ数年環境対策の一環として山岳トイレなどに使われ始めている、
下水道や浄化槽処理などを必要としない、いわゆる「自己処理型」に近い
ものと想像できました(写真2)。
 日本ではエコトイレを処理方式で大別すると化学処理、生物処理、物理
処理の3種類がありますが、ここテーブルマウンテンで生物処理方式が使
われているとは、まさかの驚きでした。しかも小便器は無水式が使われ、
手洗い水洗には"マウンテンウォーター"のサインがあって、山から湧き出
す自然の水を使っていることを実感しました(写真3)。
 こうして南アフリカで自然環境保護と観光の"共生"を実体験できたの
は、想像以上の収穫でした。

 日本で富士山が世界遺産登録の選に漏れた一件は、不法投棄のごみ
が目立ち、用足し後のティッシュペーパーが散乱していることにその一因
があるといわれます。現在富士山では、官民をあげて環境再生と環境保
全のための対策を実施していますが、早い時期に世界に誇れる山となる
ことを願っております。


ショッピングセンターのトイレ壁画
デザインにも南アフリカらしさが・・・。


南アフリカのペンギン達。
ゆうゆうと生活しているのが羨ましい。



窓のあるトイレのオムツ交換ベット。
そよ風を感じる…。


ワイナリーのトイレは、
木のぬくもりを感じる。

レストラン「ママ・アフリカ」の店内


レストラン「ママ・アフリカ」のトイレ
派手なトイレだが、愛らしい。


テーブルマウンテンには生物処理方式
のエコトイレが設置されていた。


手洗い水洗には山の自然水"マウンテ
ンウォーター" が使用されている。


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