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報告レポート(112回)

SHOP JAPAN 2007 店舗アメニティセミナー
「『店作りにおける魅力あるトイレとは』」  

開催:2007年3月7日(水)13:00〜16:00
場所:東京ビックサイト(東京都江東区)会議棟6階

◎今回は、東京ビックサイトで開催の「SHOP JAPAN2007」の一環で開
催されたセミナーに参加することを定例会としました。このセミナーは当研究
会の代表である坂本菜子氏がコーディネートしたもので、第二部では当研
究会の研究員が発表しました。第一部もトイレメンテナンスの大切さが何度
も議論されました。また事前申し込みが殺到し、会場も満席で、トイレに対
する社会の意識の高さが証明された、貴重な会となりました。


第一部13:00〜14:30
テーマ「これからの店づくりにおけるトイレの役割」
‐顧客ニーズにこたえる、人の集まる魅力あるトイレとは‐
 講師:
 ●叶 篤彦氏 ジェイアール東日本ビルテック(株)代表取締役
 ●小林純子氏 設計事務所ゴンドラ代表/日本女子大学非常勤講師
 コーディネーター:
 ●坂本菜子 坂本菜子コンフォート研究所代表/日本トイレ協会理事


1、坂本菜子氏より「これからの店づくりにおけるトイレの役割(日本・
世界のトイレ事情から)
 私は本日コーディネーターの立場からお話をさせて頂きます。先ず日本の
商業施設のトイレの近年の移り変わりを見てみますと1985年ごろまでは商
業施設といえどもトイレに特に手をかけることなく過してきました。
 1986年トイレを「第三空間」と捉えたXSITE体験トイレが六本木アークヒル
ズに出来ました。これは世界のトイレを集めたショルームの一部に体験トイ
レとして新しい考え方を導入したものです(私も参画しました)。1987年には
上記の考え方を基本に「銀座松屋コンフォートステション」がオープン、第一
弾女性の為のトイレとして,ダストボックス、荷物賭け、荷物置き棚、パウダ
ーコーナー、フィテングコナー、ベビーベット、親子トイレ,誰でも使えるトイレな
どこの時代での最先端のトイレ作りに挑戦しました(時代は高度経済成長期
でした)。
 その後、全国にデパートのトイレブームの波が広がりました。
 その頃JR東日本の駅のトイレの調査を行うなど駅トイレの見直しが始まり
「トイレブーム」期が始まりました。本日のパネラーの叶様小林様はその時
期からご一緒にトイレ関わって来た仲間ともいえる方々です。
 1995年頃よりバブル崩壊期にはトイレも「省コスト追求期」に入ります。
 2000年頃よりは「環境追及期」(防汚・節水などの商品の登場)。
 2004年頃より「もう1歩先の成熟期」を迎えオーナーも利用者も要求度は
高まりますが利用者マナーは解決できません。一方維持管理メンテナンス
の重要性を考えられるようになりました。
 2007年商業施設のトイレは食とも通じる場所でもあり ノロウイルスや衛
生面も含めて考えて行く必要がある時期と考えます。
 本日はお2人のパネラーから多くの経験と今後についてお話を頂きたく、
よろしくお願いいたします。

2、叶 篤彦氏より
 私は国鉄、JR東日本を経て、現在は駅や駅ビル等の維持管理を行う会社
の社長をしています。管理規模は、約1700の駅、約50館の駅ビルなどで、
これにオフィスビルやホテルなどを加えると、トイレの数としては約7000箇所
にも上ります。
 国鉄時代の駅トイレは、4K(暗い・汚い・怖い・くさい)の代表格でしたが、
87年にJRが発足してからは、3C(Clean=清潔・Convenient=便利・
Comfortable=快適)を目指し改良に取り組んできました。
 具体的には、「清潔さの追求」として、汚れにくく清掃しやすい便器や床の
開発などを、「使いやすさと機能の充実」として、多機能トイレや音声案内、
ベビー休憩室などどなたにも使いやすい設備の整備を、「快適性とデザイン
性の向上」として、明るく快適なトイレづくりを進めてきました。最近では、上
野駅や大宮駅に代表される「駅ナカ」と呼ばれる商業施設開発にあわせた
駅トイレ整備も進められています。
 公共的トイレ整備には3つの課題があると考えます。1つ目は男女バランス
です。男女どちらかが長蛇の列にならないよう、利用者層を考慮した計画が
重要です。2つ目はコストバランスです。グレードが高いほど維持管理コスト
も高くなることを受け入れられるか。いわば事業者の決意ともいえます。一
方で、節水装置導入などランニングコスト削減の工夫も必要となります。3つ
目は利用者のモラルです。故意に物を詰まらせたり、乱暴な使用による破
損はまだまだあります。当社では、詰まり原因の多くを占める携帯電話を除
去するツールを製作し、早急な復旧に努めています。
 魅力あるトイレのために維持管理が大切なのは言うまでもありません。平
塚駅や小田原駅などにある駅ビル「ラスカ」のトイレは、情熱的なメンテナン
ススタッフにより守られています。こうして生み出されるトイレパワーが、店
舗そのものの魅力にもつながっていくと思います。

3、小林純子氏より 「商業施設のトイレ事情とこれから〜設計を通し
てみえた傾向〜」
 私がトイレを専門的に設計し始めて十数年が経過しました。商業施設のト
イレ事情を私は以下のように考えます。まず外出先での利用者のトイレに対
する要望は、安全・安心・清潔・ユニバーサルデザインです。一方、設置者
のトイレに対する要望は、来店客に対するサービスの強化・集客性・メンテ
ナンス性です。その背景には、利用者の求めるレベルの向上に追いつく努
力や、商業施設間の競争の激化などがあるでしょう。そのgive & takeの関
係が商業施設のトイレをより積極的な快適さの場にしているといえます。
  今後の商業施設のトイレづくりの傾向は以下の6つだと考えます。
 @基本的快適さ(機能性)のアップ
   →利用者ニーズに対する細やかな配慮
     ユニバーサルデザインの実践
 A外出先での小休止の場としての多様な展開
   →・顧客サロンとしての化粧室の充実
     ・家族の小休止をかねたファミリートイレ
     ・設置場所の特性をデザインする・・・(展望・景観等)
 Bメンテナンスの重要さの認識
   ・メンテナンス体制の見直し(例:ラスカのトイレメンテナンス会議など)
   ・特殊清掃の導入
 C有料化への実践
   ・特定多数の利用者に対応しての快適さの獲得
   ・サービスの強化
 D設置者側からのPRとサービスの充実をかねて
   ・商品展示や試供品の提供
 E従業員の労働環境への配慮など
  ・休憩コーナーや従業員トイレの充実
 ※上記の実例をスライド写真を使って、紹介して頂きました。
 これらに大切なのは、敵を知る事、すなわち現場調査を綿密に行うことで
す。現場を知るとたくさんの発見があり、より良いトイレ作りに生かせます。
公共トイレはだんだん高レベル化しており、トイレが果たすべき役割が複合
化しています。最後にトイレのメンテナンスは創造(の源)とも言えるでしょう。
メンテナンスなしにトイレ作りはありえません。今後も設計と維持管理をトー
タルに考えて、より良いトイレ作りに勤しんでまいりたいと思います。

4、会場からの質問
【Q1:和式トイレはまだ必要か?】
A:洋式化が進んでいるのは事実だが、和式でないと嫌がる方がまだいる
のも事実。なくす事は出来ない。ただし数は1つでいいのではないか。
【Q2:今後高齢化社会が深刻になるが、多機能トイレは1つで足りるか?】
A:2つ以上作れれば理想だが、スペースに限界があるので、他のトイレを
中間的な広さにするとか、他階で機能を増やし選べるトイレにするなど、空
間内での工夫も大事。
【Q3:トイレ設計で最も大切にしていることは?】
A:徹底的に現場を知る事。そして安全と安心と清潔を実現することです。



第二部14:40〜16:00
「店づくりにおけるトイレメンテナンス実践」
  講師:
 ●中嶋悦子氏 日本トイレ協会メンテナンス研究会研究員 (潟Aメニティ)
 ●井上和男氏 日本トイレ協会メンテナンス研究会研究員 
             (潟激bツクリエイト代表取締役)
 ●森 聡也氏 日本トイレ協会メンテナンス研究会研究員 (潟Aメニティ)
  コーディネーター:
 ●坂本菜子氏(坂本菜子コンフォート研究所代表/日本トイレ協会理事・
   メンテナンス研究会代表)

5、坂本菜子氏より 「日本トイレ協会メンテナンス研究会とは」
当研究会が発足して15年になりました。設立当時、トイレはめまぐるしく変
化しましたが、せっかく作ったトイレも維持管理がままならず、汚れや破損に
悩む方が多くおりました。そこでトイレメンテナンスについての研究・提言・報
告書作成・社会活動・海外指導などを行いました。現在では世界からも求め
られる世界唯一の活動を行っています(これまでの活動を、スライド写真で振
り返りました)。


6、中島悦子氏より 「トイレ診断と予防メンテナンス」
私は「トイレ診断士」という資格の1級を取得しています。これはトイレ専門の
お医者さんみたいなもので、トイレの維持管理の状況を様々な角度から診
断し、お客様に報告をするという制度で、数多くの商業施設のトイレを見てま
いりました。
 具体的には、「臭気診断」(トイレ周りの空気を収集し、悪臭の度合いを数
値化する)や、「換気測定」 (換気扇が順調に動いているか?室内の空気が
1時間に10〜15回回転しているか?など)、「水漏れの確認」「汚れの付着
状況」「大腸菌の付着状況」などの項目を調べます。すると一見きれいに見
えるトイレでも、温水洗浄便座のノズルが不衛生なままになっていたり、排
水口の封水が出来ていない(下水臭が床から上がってしまう)などの問題を
発見することができます。また従業員用トイレの環境が劣悪なところも少なく
ありません。見た目の良さも大切ですが、適切な維持管理無しに良いトイレ
は維持できない事を、お気付きいただければと思います。


7、井上和男氏より 「トイレのコーティングについて」
私はトイレの床や便器に、ガラス質のコーティング材を塗る業務をしておりま
す。まず特殊洗剤や道具を使い、現在付いている汚れを完全に除去しま
す。そしてコーティング材を塗布し乾燥すると、便器や床は輝きを取り戻すだ
けではなく、汚れにくく、悪臭を放たなくなります。それにより日常清掃が簡
素化し、中性洗剤で清掃ができ、素材の劣化を防ぐなど、メンテナンスが容
易になるという具合です。
世の中には残念ながら、まだ使えるのに廃棄される便器があります。コーテ
ィングをすることにより、基材の延命化ができ、ゴミを出さない「プチリフォー
ム」が可能になるので、私たちは環境保全にも貢献したいと考えています。


8、森 聡也氏より 「小便器の排水管に付着した尿石除去の実際」
 私は、トイレの中でも特に小便器の排水管に付着した尿石の除去を行って
います。尿石とは尿のタンパク質が細菌の働きによって、便器や床・壁・排
水管に付着する石のようなもので、これが悪臭や詰まりの原因になります。
状態のひどいものを除去するには特殊高圧洗浄が必要で、これは人間で言
えば外科手術を行うようなものです。私たちは胃カメラのような小さなカメラを
便器内から排水管に挿入し、付着状況を確認し、付着状況に応じて、除去
方法を検討します。時には便器そのものを外して行うことさえあります。尿石
は付着状況が困難であるほど、除去作業も費用が高く、設備に負荷が増え
るので、予防が大事です。そして、早期に発見し、早期に処理するために
も、日々のメンテナンスを大事にしていただきたいと思います。


9、感想
 今回のセミナーの申し込みが殺到した事を知り、トイレに対する世間の意
識の高さを垣間見た気がしました。また、セミナー中の「公共トイレはどこま
で進化すべきなのか?」という一言が印象的でした。つまり豪華になること
が益々期待され、排泄以外の目的を果たすトイレが増える一方、メンテナン
スも複雑化し、コストも増加するからです。よい意味で、維持管理のしやすい
トイレが増え、管理者意識と使用者マナーの向上が必要になると感じまし
た。(報告者:アントイレプランナー白倉正子)


会場は熱気ムンムン!


コーディネーター坂本菜子氏



様々な手洗い器も増えた



駅トイレを語る叶篤彦氏



JR独自の研究をしている



商業施設のトイレの第一人者
小林純子氏



ユニバーサル対応も様々



会場からも真剣な質問が



メンテ研の歴史を振り返る



トイレ診断士の中嶋悦子氏



温水洗浄便座の洗浄ノズルは
予想以上に汚れがあり不衛生



トイレコーティングのプロ
井上和男氏



コーティング技術で
便器や床が輝きを取り戻す



小便器の奥の世界へ
森 聡也氏


小便器の排水管の内部は
尿石が固着している




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