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報告レポート(第104回)

これからは、若手会員が交代で定例会の様子をレポートします。

2005年12月19日(月)15:00〜18:00 
(於 株式会社INAX 銀座ショールーム8F)
   
 
 テーマ:トイレ床の清掃(ドライ方式)について
 
 講師:岸 正 氏
      (株)環境管理総合研究所 取締役専務理事 
  

 ●はじめに:私とトイレ清掃
 私は大手ビルメンテナンス会社であるダイケングループの子会社の一員と
して、ビルメンテナンスに関する研究や講習を行っています。ビルメン業に関
わって40年近く経ちました。毎月20日に「二十日会」で、靖国神社等で落ち
葉拾いや公衆トイレ掃除を行っています。また香港、シンガポールなどでの
清掃指導体験でトイレ清掃を行った事もありました。

 ●まず本論に入る前に、建築物清掃の基本をお話します。
 まず「清掃の目的」における「人工環境内での快適性」ですが、1.衛生的
意義、2.美観確保、3.保全性の寄与、4.安全性の確保、5.サービス性
が上げられます。
 トイレの場合、「床が塗れたままだと滑りやすくなる」「清掃中でもトイレを使
用できるように心配りすることがサービス性である」「洗面所のまわりが濡れ
ていると女性の化粧用具を置く場所も無い→サービス性の低下につながる」
と指摘されます。
 次に「建築物清掃技術基準の四目標」を説明しますと、@環境衛生の向
上、A保全性の向上、B労働安全性の向上、C作業能率の向上がありま
す。つまり、その道具や方法でかえって環境を悪化させないかどうか、設備
を傷つけないか、清掃従事者にとって不安全ではないか、作業性がよいかを
考えなくてはなりません。
 例えばトイレでは、タイルの床を酸性洗剤で洗浄した後、目地のかびをとる
ために漂白剤を使用し、気分が悪くなったという事故があります。これは酸性
洗剤と漂白剤を混ぜてはいけないという常識をわかっていても、やってしまう
事故です。また、洗剤は「油水酸還」という原則があります。まず、油をとるた
めの洗剤を使って油を除去し、次に酸性洗剤でしつこい汚れを除去します。こ
れでも落ちない汚れは、漂白剤などを使用するという具合です。こうした基本
を大切にしなくてはなりません。

●「ビルクリーニングの五原則」
 そしてビルクリーニングは、以下の5つを踏まえて清掃方法を検討しなくて
はなりません。
 @建材の知識(化学的、物理的性質など)…例:天然石は薬品に弱いなど
 A汚れの知識(原因、種類、付着状態、経時など)
   …薬品使用時の作用時間などに関係するので把握が必要。
 B洗剤の知識(働き・性質、種類、留意点など)
 C作業方法の知識(洗剤による化学的力と、器具や機械による物理的力)
 D保護剤の知識…保護剤とは、ワックスや床維持剤・防汚剤・シール剤を
  床に付着するなど、汚れを付きにくくしたり、除去しやすくする手法。
  洗剤の使い方や、順番が大切。たとえば、壁の洗浄でも、材質によって 
  は上から洗浄するもの、下から洗浄するものがある。(上から洗浄すると 
  液だれして、跡が残ってしまうので)。
トイレにも、この5つの視点をもって総合判断しなくては、かえって汚れを付け
たり、建材を傷つけることにつながります。
  


講師の岸正さん。ビルメン業界では一
目置かれる技術者です。





清掃の基本からお話いただきました。







 ●いよいよ本題に入りますが、床の清掃方法には2つの種類があります。
1つは湿式(ウェット方式ともいう)です。これは水や洗浄剤の塗布をして、表
面洗浄や一般洗浄を行う事を言います。2つ目は乾式(ドライ方式ともいう)で
す。こちらは保護剤のメンテナンスを行うもので水や洗浄剤の使用は少量で
抑えます。それにより安全性や保全性が高く、綿密な作業計画が決め手と
なります。
 次に床材ですが、これも2つに分類できます。1つは「弾性床」で、ビニル床
タイル・ビニル床シート・ゴム床タイル・コルク床タイル等を指します。2つ目は
「硬質床」で、陶磁器質タイル・石・コンクリート・モルタル・レンガ等を指しま
す。
 ここでは、さらに乾式(ドライ方式)について管理サイクルをお話します。
まず「弾性床」ですが、@除塵(ホコリを除去)Aモップ拭きB補修1:空バフ
ィング(=床磨き機に赤又は白パッドを装着して床維持剤を補充しないで研
磨する事)C補修2(スプレーバフィング、スプレークリーニング=中度の汚れ
を除去)D表面洗浄E剥離洗浄という具合です。
 「硬質床」の場合は、@除塵A水拭きB補修(注:床維持剤使用の場合は
実施)C一般洗浄D表面洗浄・剥離洗浄という具合です。(具体的な用語の
説明や、清掃方法は、当日講師が配布した資料を後日リンクしますので参
考になさって下さい)

 ●最後に、「トイレ床の清掃評価」をお話します。
清掃がきちんと行われているかを管理するために、以下のような基準でチェ
ックします(社団法人全国ビルメンテナンス協会の建築物清掃管理評価資格
者制度より抜粋)。
  @小便器下(特に手前に)に汚れが無いか
  A隅々にほこり・汚れの堆積はないか
  B《弾性床》床維持剤のむら・ヒールマークは目立たないか
    《硬質床》目地に汚れの堆積はないか
 これらは今のところ、感能検査(五感を利用した方法=目視や接触等)で
行うことが多いですが、機器を使って測定するものも出てきています。ビルな
どでは、入り口に近い小便器がよく利用され、汚れやすくなっています。オラ
ンダでは半官半民の組織で清掃を評価する組織があります。そこではトイレ
の場合、便座の裏表などチェックポイントを定めています。鏡などは、磨いた
後照明を消して、懐中電灯を下から灯して、汚れが残っていないかを斜めの
角度から見ると確認することが出来ます。
 それから、トイレブラシには殺菌やカビが付着しており、O−157の感染源に
なるとの報告も最近あった事を重ねてお知らせします(消毒には消毒液での
付け置き殺菌や天日干を)。
 私にとって「トイレ清掃」とは、ビルメンテナンスの中の一部という認識のた
め、充分に話が出来たか分かりませんが、これで講義を終わりにします。あ
りがとうござました。
 

実践的な話が聞きたいと
熱心な聞き手。






質問も活発に出ました。
  
 ○参加者からの質問

Q1、尿汚れは酸性洗剤で除去するのが一般的だが、酸性洗剤に弱い
床材の場合にはどうしたらよいか?
A1、そもそも、酸性洗剤に弱い建材をトイレで採用するという設計が間違っ
ていると思う。大理石などの酸性洗剤に弱い建材は、ダイヤモンドパッドなど
で表面を削ってみる。ちなみに本物の大理石と人造の大理石の見分け方
は、実際に触ってみると良い(本物は冷たいからだ)。御影石くらいなら、酸
性洗剤を湿布する事(洗剤を汚れに付けてしばらく放置し化学反応を起こさ
せて汚れを取る方法)も出来ない訳ではない。塩ビ系の床材なら基本はモッ
プなどに水を湿らせ硬く絞って、こまめに擦るのが一般的である。酸性洗剤
に強いとは言えないが、使っても影響をあまり受けないだろう。

Q2、乾式清掃用の床材における建材、薬剤、汚れの関係について詳
しくお伺いしたい。また床の排水口は、(便器内が詰まって、あふれ出
た汚水を除去できるように)乾式でも湿式でも設置するべきであると研
究会内では考えるが、最近は乾式床が増える中で、排水口を無くす傾
向が増えている。どう思うか?
A2、乾式清掃を行う床材の場合、ワックス(保護剤)を塗るのは一つの方法
である(汚れにくくなるので)。乾式清掃でも作業中は水を使って清掃してい
るが、排水口に水を流すほどの量ではない。またワックスを剥離する際、剥
離による洗浄水が発生するが、これを直接排水することは環境上良くないの
で、汚水専用バキュームで吸い取って、産業廃棄物として処理をしており、
排水口は逆に閉じてしまうので、排水口は不要である。ただし、便器が詰ま
って汚水が便器内の水が漏れてしまう際には、排水口があった方が便利だ
が、ワックスは水に弱いので、その後なんらかの対処すべきだと考える。

Q3、清掃性を考えてオフィストイレで適している床材は何だと思うか?
A3、磁器タイルです。

Q4、汚垂れ石(小便器の足元にある最後の一滴を受け止める別素材
の床材)はどうですか?一般的に御影石が多く使用されているが、場
所によっては汚れが取れないでいるが…。
A4、御影石くらいしかないので、なんともいえない。タイルなら保護剤を塗る
必要もそんなに無いので、環境にもよい。また、ほどほどにきれいにするとい
うことも大切で、必要以上にピカピカにする必要は無い(滑り防止のため)。

Q5:壁に適している素材は何だと思いますか?
A5:焼付け塗装鋼板がよい。

Q6:ワックスの剥離(ワックスを剥がす事)の時の環境問題が気になる
が、妙案はあるか。
A6:現在は薬剤で溶かして剥がす方法が一般的であるが、物理的にこすっ
て消しゴムかすのようにして剥離する方法も検討されてきている。

<勝俣敦祐氏より、台湾トイレシンポジウムの報告>
12月10日に「台湾トイレ協会」のシンポジウムが台湾で行われ、日本トイレ
協会を代表して、勝俣敦祐氏(メンテナンス研究会幹事兼務)が出席しまし
た。
新潟県庁から米田氏も出席され、震災時のトイレ対策を発表しました。
100名くらいが参加しており、非常に盛り上がりました。

…定例会終了後、中華料理店で忘年会をし、美味しい紹興酒で1年の疲れ
を癒しました。

 ○参加した感想
 最近、建築環境のインテリジェンス化・アメニティ化に伴い、建築仕上げ材
も多様化・複雑化しています。トイレもその例に漏れず、乾式床が増えてお
り、うかつに水で流して掃除ができないトイレが増えました。そこで今回の講
習を企画しましたが、建材ごとに清掃方法を研究をする必要があるようです。
早急に研究しなくては、手遅れになるトイレが増えてしまうと感じました。(白
倉正子) 【議事録担当:村上八千世・白倉正子 (個人会員)】




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