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報告レポート(第103回)

これからは、若手会員が交代で定例会の様子をレポートします。

2005年10月17日(月)15:00〜18:00 
(於 新宿Lタワー26階 TOTOプレゼンテーション室)
   
 
 テーマ:衛生・美観・消臭を目的とした
         論理的なトイレメンテナンスの考え方
 
 講師:矢部 要氏(株)アムテック代表取締役
  

 ●当社は(株)アムテックと申しまして、主にビルメンテナンスのための指
導や洗剤販売を手掛けております。当社はアメリカのオハイオ州にあるスパ
ルタンケミカル社の日本総輸入代理店で、スパルタンケミカル社とはジョンソ
ンワックスに並ぶ世界的に有名なケミカル(化学洗剤)の会社です。
 アメリカと日本のビルメンテナンス業界の大きな違いは、情報技術の公開
の度合いだと感じます。日本は閉鎖的であるのに対し、アメリカではお互い
の情報を公開し、ある一定の基礎情報を共有した上で、サービスを競ってい
ます。ビルメンテナンスで最も大切なのは「正しい知識を持つ事」です。なぜ
なら多数の素材や汚れがあるので、課題が多岐に渡り、しかも最新情報が
次々に誕生するので、1社がすべてをマスターできないからです。そこでお互
いに情報を共有して学びあい、正しい知識(グローバルスタンダード)を得る
事が必要だと常々感じています。

 ●まず美観(清掃)についてお話します。
 メンテナンスには物理的力(道具で擦るなど)と、科学的力(化学洗剤の洗
浄力など)のバランスが大切です。そしてクリーニング(清掃)はすぐ結果が
出ますが、メンテナンス(維持管理)は、長期的な視点や取り組みが大切で
す。例えば海外ではカーペットのメンテナンス技術が高く、なんと700年も寿
命を延ばすことが可能です。これはメンテナンスの意識の高さを物語っている
と言えるでしょう。
 さて洗剤の主成分は界面活性剤ですが、それには2つの力があります。1
つは水と油を仲良くさせる機能(親水基と親油基)があり、汚れを溶かす力が
あります。2つ目は表面張力の低下です。簡単に言うと、薄っすらした細かい
汚れ(ファインミスト)を落とす力で、美観の向上と衛生面で非常に重要です。
 洗剤の性質と強さはpH(ペーハー:水素イオン濃度)で表現されます。pHは
0〜14で表現され、7が中性になり、数が多いほうがアルカリ性で、少ないほ
うが酸性になります。殆どの汚れはアルカリ側で落ち、pH9〜11のアルカリ
性洗剤を『万能洗剤』と呼びます。様々な汚れに効くからです。酸が有効な
のはトイレ・浴室・金属の錆び落としなどに限られます。数値が0や14に近づ
くほど、酸・アルカリが強いことになります。
 トイレは特別な場です。酸性洗剤でなくては除去できない汚れ(水垢や尿
石)があるからです。特に尿石は、尿中のカルシウム分が固まった堆積物で
す。カルシウムはアルカリと同じ成分ですから、アルカリ洗剤をつけると、逆
に汚れを増やしてしまいます。ですが、酸性洗剤は「正しい使い方教育がな
されずに失敗が続出した」「安全な酸性洗剤が(当時は)無く、ほとんどの汚
れがアルカリで落ちたのでさして問題にならなかった」などの理由で、あまり
好かれませんでした。
 でも最近は、同じ酸性の中でも、かつて危険とされた塩酸ではなく、クエン
酸というお酢のような人体にも環境にも優しい酸性の素材が、(多少高価で
すが)トイレ洗剤として利用されています。酸性洗剤を扱う際には3〜5分の
時間が必要(30分以上は放置してはいけない)・酸と次亜は混ぜないことを
覚えておきましょう。

●話題は変わりますが、アメリカでは「ブラッドボーンパソゲンズ(Blood
Borne Pathogens)」に対する警戒が行き届いています。これは「血中病原
体」と呼ばれ、人の血液・体液で感染する病気のことで、HIV(エイズ)、HBV
(B型肝炎)などがそれにあたります。この病気に罹患(りかん=病気にかか
ること)すると現在の医療では完治の方法が有りませんので、罹(か)らない
様にする事が大変重要です。例えば警察官が犯罪者のボディチェックで身体
に触れる場合には、ゴム手袋で手を保護するという徹底振りです。これはビ
ルメンテナンスワーカーにも充分当てはまります。
 トイレの場合は人の血液・体液が排出される可能性が高い場所ですので、
便器に手を入れたり、ゴム手袋をせず素手で清掃する事は絶対するべきで
はありません。最近は日本でもノロウィルスなど感染病が話題になっていま
すが、まだまだ認識が皆無です。鳥インフルエンザなど話題の感染症に対処
するには、こうした技術を高めたものが要求されることになります。

  



講師の矢部要さん。手振り身振りが
大きくて、参加者の目を釘付けにしま
した。






難しい話も分かりやすく
説明して頂きました。




参加者は洗剤に関心の高い会員が
目立ちました。
 ●さて、次は消毒の話題です。
 アメリカではトイレが臭くありません。なぜなら洗剤の中に消毒作用が一緒
に入っており、清掃時にバクテリアを除去しているからです。消毒剤にはいく
つかの種類がありますが、現在お勧めなものは「第四級アンモニウム塩系」
です。これは弊社の洗剤に入っております。アメリカにはCDC(米国疾病管
理センター)が有り、伝染病についていろいろ調査し、その防御方法のガイド
ラインを出して指導しています。そのガイドラインではEPA(米国の環境保護
局)の認定した洗剤を使用することになっています。これは洗剤の検査を60
回行い、1度もバクテリアが出ないテスト結果が必要な非常に厳格なもので
す。弊社の衛生清掃が必要な洗剤は皆この認定を受けています。いかに信
用度の高い安全な洗剤かはご理解頂けると思います。

 ●次に消臭の話題です。
 消臭方法にはこれまで「除去(臭いの基を除去)」「マスキング(いい香りで
隠す)」「吸着(活性炭などで吸着)」がありましたが、現在は「ニュートライゼ
ーション」という手法がお勧めです。これは悪臭の分子を酸化させたり、還元
させたりすることで、臭いの分子の性質を変化させる方法です。
 最近は更に次の2つの方法に注目が集まっています。「ディスインフェクタン
トクリーニング」は、バクテリアを殺してしまう方法です(但し効果が長持ちし
ません)。もう一つは「バイオクリーニング」で、悪臭の原因のバクテリアに、
別の人体には影響のない強いバイオ(微生物)を与えてしまい、悪臭の原因
菌の働きを抑える方法です。これなら効き目も長持ちします。でも衛生的とは
言いがたいデメリットもあります。

 ●これまでに美観(清掃)・衛生(消毒)・消臭(バイオ)の3つの話をしまし
たが、弊社の製品の特徴は、その3つをいずれも兼ね備えた優秀な洗剤だと
いうことです。普通、3つの要素をもった洗剤を1つの入れ物に入れると、お
互いの成分を殺しあってしまい役に立たないのですが、弊社はそれを解決し
実現したのです。弊社の製品にはそれぞれの状況に応じた洗剤を取り揃え
ておりますので、何の問題を最も取り除きたいかで、お勧めする製品が変わ
ります(このあとはサンプル品やカタログで説明をして頂きました)。
 もう汚れを取るだけのトイレ清掃は終わりにし、衛生的で効率的な手法を取
り入れていただければ幸いに思います。 


世界的に使用されている洗剤。






質問も専門的!


  
 ○参加者からの質問

Q1、トイレの床の汚れはどうしたらいいか?
A1、素材や汚れにもよるが、弊社のアルカリ性の洗剤を薄めてモップで拭く
といいでしょう。

Q2、バイオが尿石に付くと効果的だそうだが、水圧で流されてしまう
のではないか?
A2、弊社のバイオは渓流の藻に付いているバイオを使っているので、平気で
す。

Q3、バイオの含まれている洗剤を扱う際の温度や湿度の注意点は?
A3、バイオは常温でも充分効果有りますが、10度温度が上がると効果が倍
になります。最適温度は40〜50度ですが、60度以上では死んでしまいま
す。

Q4、バイオの含まれた洗剤を使って、浄化槽のバイオ(微生物)への
悪影響はないか?
A4、ありません。嫌気性と好気性の成分両方があるから大丈夫です。


 ○参加した感想
 清掃をする上で、洗剤の正しい知識が必要なことは分かっていましたが、
実際は難しい化学の知識が必要なので悩んでいた分、分かりやすい説明
で、理解が深まりました。またアメリカの進んでいる技術に感嘆しました。最
近感染が問題視されていますが、新しい技術を取り入れ、より安全で衛生的
なトイレメンテナンスを普及すべきだと感じました。
  【報告者:白倉正子(個人会員)】



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