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報告レポート(139回)


2010年12月13日(月)15:00〜18:30
会場:TOTO鞄結梹x社(東京都新宿区新宿)

■テーマ1
「トイレの清掃・メンテナンスに役立つエコ改善提案
KKKS(株)サンケイサポート 代表 入澤徹氏

■テーマ2
男女別スペースにおける車椅子対応トイレ&扉やスペースとメンテの関係」

コマニー叶サ品開発部 高橋未樹子氏

今回は2つのテーマの講師をお招きして、それぞれ違うお話を伺いました。

一人目は岐阜県で長年給排水事業に従事されている入澤徹さんより、床排水や給水弁の不断水更新・排水通気の改善アイディアを伺いました。二人目は石川県の工業試験所と石川県リハビリテーションセンターで共同研究をされている、コマニー鰍フ高橋未樹子さんより、車いすトイレの広さやドアの関係について伺いました。終了後は忘年会で盛り上がりました…。


1、一人目:トイレ清掃・メンテナンスに役立つエコ改善提案 

私は岐阜県で長年、下呂温泉などの水回りの設計・施工管理やメンテナンス指導に関わっている入澤徹と申します。これまでに古くなった給排水設備のリニューアルに何度も関わってきました。しかし現場では問題が多く本当に悩んでいます。そこで今日はトイレに役立つと思われる、エコロジーで低コストかつ簡単な改善アイディアを3点ご紹介させて頂きます。ただしその前に、排水管や給水管ではどんな問題が山積しているのか?を説明します。

まず、設置から20年以上が経過したトイレ(以後:経年トイレ)ですが、リニューアルや改修工事が定期的に行われているものの、実際はうわべの器具交換や仕上げ更新が多く、手に負えない設備の機能回復は、先延ばしになりがちでした。 これではトイレは悪化するばかりで、これが現実なのです。

ところで給排水の視点から見て、トイレにはどんな機能があるでしょうか?それは…

@環境保全機能…下水臭・有毒ガス・害虫などの侵入を防ぐ
A排水機能…排泄物や清掃汚水を不具合(詰まり等)無く、スムーズに下水に流す
B給水機能…必要な水量と水質を確保し、緊急・器具交換時等に開閉が出来る給水弁がある

等が上げられます(これ以外に換気や器具機能があります)

ではこれらが現場では、どんな不具合を起こすのでしょうか?

まず@環境保全機能ですが、器具や配管の劣化や破損に伴い、環境汚染が起こるだけでなく、維持管理の負担が増えます。A排水機能ですが、経年使用に伴うサビの付着・配管陥没ズレ・異物堆積等で、頻繁に排水詰まりが生じ修理費がかかります。B給水機能ですが、古くなった配管や弁は、管の接続部にサビが多く発生するので、必要水量が不足し排水が満足に出来なくなったり、器具給水栓や配管の破損による緊急の弁の開閉操作の対応や、弁棒の劣化破損による弁の開閉操作が不能になる…という具合です。これらをなんとかしたいのですが、実際はお金も手間もかかるので、そのまま放置されてしまうのです。


2、トイレメンテナンスに役立つ、オリジナルサポート(3つのアイディア)

そこで、私のアイディアを3つご案内します。これらは私が経験と試作・実証を重ねて編み出した、エコロジーな技法&工法です。

■A案/経年床排水金物のエコ修繕

 まずトイレの床排水口とその金物ですが、古いものは、金物製の湿式のベル(ワン)トラップ付(封水を行うため)がほとんどでした。しかしサビやゴミが付着しやすくて除去が難しく、排水不能となったりまた逆にベル(ワン)を外されてしまい、封水機能が無くなるので下水臭が室内に入って臭くなるケースが、後を絶ちません。

 そこで経年床排水金物のエコ修繕を考案しました。まずベルを外し、中央部に立ち上げ調整管(塩ビ製)を差し込み、下水につながる排水口の高さを床面近くまでに上げます。そして私が編み出した逆止弁構造の乾式トラップ(樹脂製・着脱可能)を上から装着します。そしてその周囲をエポシキという素材でコーキング仕上げ(水色の部分)をして完了です。作業時間がこれでたったの20分程度です。メリットは @逆止弁構造により下水臭や害虫の侵入を防止できる A清掃が楽になり、床排水がスムーズになる B施工が短時間で可能な上、修繕費や消耗品が安価で、節水効果もある…などです。

これまでの悩みがあっという間に無くなり、現場でもクレームはなく「トイレ清掃が快適になった」との感想を多数頂戴しております。


■B案/経年排水通気の改善

次は排水トラップ管内の通気を適正に確保するためのアイディア商品です。

排水トラップとは、排水設備の配管の途中に設けられ、下水道の悪臭や害虫などの侵入を防ぐ装置です。形状には@管トラップ(S字型/U字型) A便器作りつけトラップ Bベルトラップ(A案のもの) Cドラムトラップがあり、それぞれ使用目的や良し悪しがあります。

排水管内の流れをスムーズに保ち、封水効果を保護するためには、適度の通気が必要です。しかし長年使用された排水・通気管内では詰まりや老朽化が原因で、通気がきちんと確保できないケースがあり、その結果、封水が破壊され下水臭が流出する事が上げられます。それを改善するために、昨今では管内負圧対応通気弁がトラップ手前に設けますが、無い場所の対処が問題です。

そこで私が考えたのは、私が独自で作った考案器具(写真)の取り付けを行うアイディアです。内部構造については、簡単な器具の組み合わせで出来ます。近日中には発表しますが、従来の通気管が不要となる排水管内の正・負圧どちらにも対応できる通気装置です。

■C案/給水・給湯弁の不断水更新

 最後は給水・給湯弁の更新を、水を止めずに行う技術の紹介です。

長年使った配管やその接続部分の弁はサビの発生などで閉塞してしまい、水量不足・赤水や錆び流失・弁棒の破壊による開閉不能等のトラブルが発生します。これを治す(交換する)ためには、すべての水を止めて工事をするのが一般的ですが、時間がかかる上に騒音や各種不具合が発生し環境に悪く、しかも大変高額です。

そこで私は管をドライアイス(液化炭酸ガス)で凍結させてしまい、その間に管の切断〜新しい弁の設置をワンタッチで行う環境重視の静かな工法を編み出しました(50A以下が対象)。もし管内に流れがあっても管をつぶすことでそれらを実現できます。この凍結工法(液体窒素を使用)は従来からありますが、−200度で行うため危険で専門技術者が必要な上、パイプシャフトなどの狭い空間や、熱湯を出す給湯管には施工困難でした。しかし私の工法は−80度で行なえ専門業者でなくても、給湯管にも出来るメリットがあります。これまでに稼働中のCUP・HTLP・SGPの施工事例が多数あり安心です。最大の特徴は、いつでも他に支障なく作業が出来る事です。

 以上で発表を終えますが、私は自分の技術が必要なところには全国どこでも駆け付けて、やりたい方がいたら惜しみなく技術を教えるつもりでいます。もし興味が御有りの方は気軽に連絡をいただければ幸いです。ご清聴ありがとうございました(このあと会場では実演公開と活発な意見交換がありました)

()サンケイサポート連絡窓口 :
 080−6911−6789 入澤



3、二人目:二人目:男女別スペースにおける車椅子対応トイレ&扉やスペースとメンテの関係

●坂本菜子代表より事前説明がありました…

 高橋未樹子さんと私は、医療福祉環境エビデンス研究会(会長:長澤泰氏/以下:HEVA)で共に研究活動をしています。このHEVAは日本医療福祉設備協会の主催する学会発表や企画展示(HOSPEX/111719日東京ビックサイト)にて発表を行っています。今年は「歴史に学び未来を語る」「地域に学び未来を語る」をテーマに日本の医療の姿を、24のキーワード別に整理しました。例えば「食」「間」「緑」「評」「厠」という具合です。この中の「扉」の担当をなさった彼女の研究を今日は伺いたいと思います。

●坂本菜子代表より事前説明がありました…

 高橋未樹子さんと私は、医療福祉環境エビデンス研究会(会長:長澤泰氏/以下:HEVA)で共に研究活動をしています。このHEVAは日本医療福祉設備協会の主催する学会発表や企画展示(HOSPEX/111719日東京ビックサイト)にて発表を行っています。今年は「歴史に学び未来を語る」「地域に学び未来を語る」をテーマに日本の医療の姿を、24のキーワード別に整理しました。例えば「食」「間」「緑」「評」「厠」という具合です。この中の「扉」の担当をなさった彼女の研究を今日は伺いたいと思います。

●高橋未樹子さんより

私はコマニー鰍フ製品開発部の高橋未樹子と申します。私どもは石川県で後付けタイプの仕切り壁(パーテーション)等を提供しており、トイレのドアも作っております。そんな私達が検証を行っているのは、多目的トイレのドアと広さの関係です(共同研究者:石川県工業試験場/石川県リハビリテーションセンター)。

日本の身体障害者の数は、現在357.6万人で国民100人中3名の割合です(平成20年度版障害者白書より)。その内181万人が肢体不自由で最も多く(それ以外は内部障害/視覚・言語障害/視覚障害)、内訳は上肢機能障害(腕や手)が25%で、下肢機能障害(足・脚部)35%、全身性運動機能障害が19%という具合です。つまり障害者と一言にいっても種類や状態は多様で、トイレの使用状態も違うことを意味しています。

さて車椅子トイレは、法律の制定により普及が進みましたが、最近では子連れなどの障害者以外の利用者が増え、「多機能トイレに加え、男女別トイレ空間に簡易型多機能トイレの設置を推奨する」」という動きが出てきました。つまり普通のトイレ内に広めのトイレを設置すると良い…というのです。よってそこでどのくらいの広さや扉が必要なのかを、検証することにしたのです。

まず私達は、障害の状態分類してみました。具体的には、@移動手段が歩行か、車椅子か? A立っている時や座っている時の姿勢が安定しているか?不安定か? B便器への移乗が、歩行か?立位移乗か?座位移乗か?介助が必要か?…という具合に細分化したのです。これにより13種に分類できました。そしてその中の10種類が「簡易型多機能トイレでも使用可能」(=トイレが自立している方)という線引きをし、検証を進めました。

 それからトイレに入るには扉の開閉が必要ですが、建築設計基準では「引き戸や外開き扉が望ましい」とあります。しかし簡易型多機能トイレでは引き戸を使えない場合も多いので、外開戸(常閉)や折れ戸(常開)の利用が期待されています。(編者注:折れ戸=ドアを半分くらいの大きさで折り畳んで端に寄せる形状の扉)。また自分でロック(鍵)をかけられる事も重要ポイントとなります。よってその配置や大きさを研究しなくてはなりません。

4、検証から分かった、広さとドアと身体特性の関係
   

そこで次に、身体特性別に比較を行うために、それぞれの方のトイレ使用状況をビデオカメラで撮影しました<編者注:ここからは実際のビデオを見ながら説明を聞きました>。

まず開戸の検証です。片麻痺ながらも立位移乗が可能な方(F群)は、便器前方に車椅子を近付け、立ち上がって体の向きを変えるスペースが必要ということが分かりました。同様に下半身麻痺で座位移乗の方(J群)は、便器後方斜めから腕力のみで移乗するスペースが必要と言う具合です。

今度は折れ戸の検証です。車椅子使用者で立位移乗が可能な方(E群)は、車椅子と便器の間に立ち上がって回転するスペースが必要だと分かりました。しかし1400ミリ×1600ミリの広さでは車椅子による回転ができず、バック(ドアに背中を向けて出る)になります。

次に、同じ身体特性の方(ここではF群/車いすで片手片足が使えて、立位移乗の方)でブース幅を変えて比較しました。ブースが狭いと便器側方にスペースがなくフットレスト(=車椅子を利用する人の足部を支える部分。開閉するが、写真では足がひっかかってしまっている)をマヒ側の足で乗り越えられないなど、移乗動作をスムーズに行えませんでした。そこでブース幅を広げるとフットレストが邪魔にならずにスムーズに移乗を行えました。

また脳性麻痺の方(H群)は、外開戸を開けることができないのですが、折戸は一人でも開けることができました(編者注:これ以外のケースもたくさん拝見しました)

これらの検証より、扉の比較をすると、以下になります。そこで私は、これらをなんとかしたいと、3つの案をまとめ上げました。

■外開戸…通路側にスペースが必要で、通行人に当たる危険性がある。トイレ空間の一番奥に設置される、他。

■折戸…開閉操作時の立ち位置が限定され、身体特性により困難。トイレ空間の手前に設置が可能、他。

 また扉の位置(便器側方か便器前方か?)を変えたり、トイレの広さを変えて行うなど様々なパターンを検証しました。結果的には「1500ミリ×1800ミリ」ならば大抵の身体特性に対応できることが分かりました。しかし便器の位置や大きさ・車椅子の特性によっては状況が変わるので、注意が必要です。また便器と折れ戸の位置関係ですが、便器の位置から見て反対側に吊元をもって来る方が、安定した体勢で戸を閉めることができるようです。しかしゴミ箱・おむつ交換用ベット・オストメイト用器具等が、同じ空間に集約されるケースが目立っているので、その大きさや位置次第では、障害になるケースもありえます。

 このように様々なパターンを検証してきましたが、トイレの広さや状況、身体特性により理想的なトイレがそれぞれ変わるので、ひとつに決め切れない事が分かりました。しかしドアの位置や形状等を考える事で、困難な条件を減らす事が可能と同時に分かりました。トイレは決して広くないので、まだまだ研究が必要です。これからもがんばります。ご清聴ありがとうございました。


5、二人目:会場からの質問

Q1:トイレが広すぎて困る事はありますか?
  A1:広すぎると、鍵を閉め忘れた場合、便器から鍵まで手が届かないとか、精神的不安を感じることはあるのではないか…と予想します。

■Q2:折れ戸は良いことは分かりましたが、メンテナンス的な視点ではどうでしょう?

 A2:折れ戸はまだ使い慣れない方が多いせいか、使い方が分からず、思わず足で蹴ってしまう方が多いようです。同様にドアのヒンジ(蝶番のこと=戸の開閉をさせる金具部分)が壊れやすいのが問題です。また吊り戸の場合は、上の吊る部分が壊れやすいのが問題です。ちなみに最も故障しにくいのは、開き戸です。

■Q3:ドアの素材は、どんなものが適していますか?

A3:重量がある素材は、利用者にとって難点です(例:鉄板製では重く高額で、清掃時の水で錆びる事もあります…)。よってメラミン製が人気のようです。


6、感想

2つのテーマを聞きましたが、どちらも奥が深く、理解をするにはもっと勉強が必要だと自分自身で感じました。両方に共通して言えることは、作る事と使う事ばかりに視点が集まり、メンテナンスは後で気が付く…という点かもしれません。これを「初めの一歩」と捉え、もっと研究をすすめていきたいと思います。(白倉正子/アントイレプランナー代表)


 

 

























 

一人目の講師:入澤徹さん。給排水のことを語り出すと止まらない、熱血マンです。




























A案:床排水金物エコ修繕の変更写真

 







A案:断面図。ベルを外し、中央部に立ち上げ調整管を入れる事で排水位置が床面により近くなります。そして逆止弁構造のトラップを付ける事で下水臭・害虫等の侵入を防ぐことが可能になるのです。





B案/通気を確保するための器具の設置事例。右側のトラップの下にある枝管の上部に通気可能なオリジナルの器具を設置したケース(中央)です。





C案/給排水管の内部を凍らせて器具を交換している場面。とても静かに狭い場所でも施工可能なのが特徴です。




























坂本菜子代表より、HOSPEXの発表について、伺いました。

 






















高橋未樹子氏/コマニー梶B若い女性の方ですが、説明が大変分かりやすく、参加者から大好評でした。








































ブース幅が狭いと移乗が困難。フットレストを乗り越えられない


















電動車椅子の方は、外開き戸を開ける事が困難ですが、折れ戸なら開閉が可能です。


 


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