日本トイレ協会メンテナンス研究会公式HP

報告レポート(137回)


2010年10月25日(水)15:00〜18:30
会場:蟹NAX ダビンチビル(東京都中央区八丁堀)

■「トイレに関する商品開発のアイディアの
視聴とブラッシュアップ」


■発表者:
@押山郁夫氏(アトリエアーム)
「便座洗浄装置のアイディア」

A菅波正次氏(スバシステム梶j
「小便器の飛散尿滴の対策」
菅波正次氏
 

今回はいつもと指向を変え、トイレ関連の事業をなさっていないお二人の方がお作りになったそれぞれのトイレの新商品アイディアを、メンテナンス研究会で伺い、維持管理の視点からブラッシュアップしようという新しい試みをいたしました。
会場には多くの参加者が集まり、励ましから忌憚の無い率直な意見まで、次々に出されました。新鮮な切り口に、とても刺激的な会となりました。


1、一人目:便座洗浄装置のアイディア

はじめまして。私は山梨県で鍛造<金属工芸>をしている押山郁夫(アトリエアーム代表)と申します。私は小さい頃から和式便器が苦手で、洋式便器に親しんでおりました。しかし便座に直接座るのに抵抗があったので、なんとか簡単に衛生的に出来ないか?と思い、以下のアイディアを思いつきました。

 私の案は、スチーム(霧状の熱風)の力を使って便座を熱処理するというものです。具体的には便器の上に今の便座を置くのではなく、私が独自に開発した少量の水と小型モーターを搭載させた専用便座を設置し、霧吹きのように95度のスチームを出し、殺菌消毒をするという具合で、そのスチームが30秒程度で便座の上を回転(一周)するという具合です。スチームによる水滴は便座上に残らないので、最後はエアー()で乾燥させます。これらは専用の蓋で覆いかぶさっている状態で行う予定です(編者注:写真の模型ではその蓋がまだ無い状態です)。電気量ですが、単三電池2本でモーターが動かせますので、機械を小型化することも容易です。

これで世界初の完璧トイレが完成するはずです。私は省エネになり、取りつけも簡単に出来ると見込んでいます。ですので、パブリック(公衆性の高い場所)では必須でしょう。特に病院のような院内感染の危険性のある場所や、体を屈めるのが大変な高齢者の多い施設では、絶対喜ばれるのではないかと期待しています。また私の近辺にいる女性たちには大変好評ですので、より清潔な環境を求める女性達に喜ばれるに違いないと、私は確信しています。そして今は特許出願中です。

そしてこれが成功すれば次のステップとして、そのスチームの水を出す機能を応用させ、便器内の汚れも掃除をしてしまい、さらに汚物の洗浄と合流させることを視野に入れております。これの技術開発を大手衛生陶器メーカーと開発すれば、洗浄水の減少に少々貢献できるかもしれません。私は、これは未来のトイレを変える新システムだと、自信を持っています。皆さまの感想をぜひ伺いたいと思います。よろしくお願いします。


2、一人目:会場からの意見

●最近のパブリックは、洋式便器の蓋を付けたがらない傾向にあるが、時代に逆行しているのではないか?

●温水洗浄便便座との融合を考えているのか?もしそうならば相当研究が必要。

●便座が衛生的であることは誰もが望むことだが、アルコールで自分で拭くなど、機械まかせではなく自分自身で確認したいのが、利用者の本位ではないか?

●販売価格が高額なるのではないか?だとしたら受け入れられないのではないか?

●家庭用では、ニーズは薄いと思う。では公共ならば?と思うが、故障やイタズラなどの危険性があるので、設置場所が限られてくるだろう。

●まだ商品化には遠い気がする。もう少し議論を重ねるべき。特にマーケティングが大事。

●ただし顧客のニーズが高まれば、作らなくてはならない時代が来るだろう。


3、二人目:小便器周りの飛散尿滴対策アイディア

私は千葉県に住んでおりますスバシステム()の菅波正次と申します。
私は男子トイレの小便器の飛散尿滴をなんとか改善したいと思い、いくつかのアイディアを考えました。(立ちションによるオシッコの便器外漏れの軽減や非洗浄部分の解消等)

まず私の経歴ですが、私は石油化学会社に勤めたあと、大手ガス会社に勤務し開発畑経験をしてきました。そんなある日、駅のトイレに入った時、男子トイレの小便器周りが非常に汚れているのが大変気になりました。なぜなら小便器手前には常に尿ダレが垂れており、ひどい場合にはオシッコが便器外にはみ出して、床を存分に濡らしており、不潔で嫌だったからです。 
トイレが排泄する場所で便器がその処理設備(排水系への移動)とするなら飛散尿滴をトイレ内に残すのは未完成の機能ではないでしょうか?

しかも小便器の歴史をひも解くと、200年前から小便器から今に至るまで、形状に少々の変化はあるものの、尿滴の問題は未だ解決しておらず、特許庁に申請されているアイディアの中にも、根本的な解決につながる案が無いのが実情です。だから清掃の方々の苦労も、いまだに減らないと思うのです。

4、二人目:既成概念を破る3つのアイディア
   

そこで私は、これらをなんとかしたいと、3つの案をまとめ上げました。

まず一つ目ですが、「小便器の洗浄水で洗えていない部分への対策」です。小便器の汚れは主に洗浄水で流していますが、便器の形状次第では、水が届かず飛散尿滴が残ってしまう部分があります(主にリム部分や便器上部・床面・便器周辺など)。そこで便器の形状を変え、オシッコを受け止めるエリア(受尿部?と呼びます)の両端部がボール部内に入るようにしてはどうでしょう?これなら受面部の全面に水を流しても洗浄水の落下を心配せず洗浄可能になります。

2つ目のアイディアは「小便器ボール部外周面から床面に流化する尿滴への対策」です。小便器の尿ダレは、便器の外周面に垂れて床に伝わりますが、これを便器内に留めるために、小便器のリム部を二重にしてはどうでしょう?これにより漏れたと思われる尿を再度受け止め、ボール部内に戻す事が出来るという具合です。このアイディアはパーティでよく見かけるシャンパンツリーから発想しました(=シャンパングラスをピラミッドのように重ねて上からシャンパンを注ぐ演出。シャンパンはグラスの壁面をつたって落ちるのです)。つまり水は壁面を伝って流れる性質を、便器に活かしたのです。二重にする部分は取り外しが出来ると、分解清掃が可能かもしれません。便器を二重にすることにより汚れが付きやすくなることも想定できますが、それは今後清掃の方と一緒に、清掃方法を検討していくつもりです。

 3つ目のアイディアは、「床面に飛散落下する尿滴への対策」です。つまり床面近傍(人が靴で立つ位置あたり)に浅い段々を設け、その側面にジェット気流噴出のノズルと洗浄水の供給口を設けます。そして床から便器方向に向かってジェット気流を噴射させ、床面の尿滴をジェット気流の勢いで洗い飛ばし、便器の付け根の奥側壁沿いに排水溝に設けて、そこへ一気に流し込むというシステムを考えたのです。
段々にすることで汚れを低い方へ流す事ができますので、使用ごとにセンサーで反応させれば、床は常に清潔でいられるという具合です。現在、実用化に向けて準備中です。

 これらのアイディアで私が最も訴えたいのは、「尿滴汚れは残るもので掃除をするのが当然」という既成概念を崩し、形状を変えることで汚れが減りやすいトイレに変えることができるという思いです。まだまだ課題はありますが、本気で商品化を考えていますので、みなさんの意見を伺えれば幸いです。どうぞよろしくお願いします。

5、二人目:会場からの意見

●問題の着眼点や、アイディアは良い。

●しかし今の便器やメンテナンスの傾向は「シンプルで誰でも清掃やしやすい」である。

●この形状は清掃がしにくい上に、汚れが蓄積しやすい気がするが、どうだろうか?

●素材を陶器にすることを想定しているようだが、陶器でこの形状を焼くのは、困難。

●ジェット気流による床洗浄は面白いが、高額になると施主は採用しにくいのでは?

●混雑するトイレでは、床面を洗浄するタイミングが取れないことも想定できる。

●洗ったり乾かしたり…を繰り返すと、水アカが付きやすくなる。尿以外の汚れもまだまだある。

●不可能の事も時代が変われば実現できる事もあり得る。諦めずに頑張って欲しい。

●トイレ清掃を自分でする体験をしてはどうか?知識だけで現場は乗り切れない。

6、感想

最初「この企画に参加者が集まるだろうか?」「参加者がノウハウを出してブラッシュアップをして下さるだろうか?」と主催者側として内心は心配でしたが、蓋をあけてみたら近年で最高の参加者数になっていました(28名)。それだけお二人の問題提起が、現場の悩み事をダイレクトに突いていたと、納得しました。逆に現場にばかりいると既成概念に縛られてしまい、新しい発想や出てこないのは事実ですので、こういう機会を通じて違う視点を取り入れることは大事だと思います。

しかしその一方で、現場のことは現場の人が一番分かっているとも言えます。忌憚の無い意見は、最大のアドバイスだったとも言えるでしょう。中には厳しい言葉も多々ありましたが、諦めずにみんなで一緒に考えて、メンテ研の力を発揮していきたいものです。(記録者:白倉正子/アントイレプランナー代表)
 

 




 
自作の模型を使って
力説される押山郁夫氏





便座の上をスチームで
「シュー!」と洗います。
(写真には煙が映っていません)



 


会場からは現場経験の豊富な
スペシャリスト達が、
忌憚の無い意見で応援します。




豊富な知識をふんだんに発揮して発表をなさった菅波正次さん







【1つ目のアイディア】

オシッコの跳ねを便器内で受け止めようというアイディアを形にするとこうなるそうです。






【2つめのアイディア】

リム部分を二重にすることで、尿ダレを便器内で受け止める案だそうです。



 


【3つ目のアイディア】
図のように、ジェット気流を発生させ、床の汚れを洗浄し、便器側床下で排水するそうです






模型を手に取り、
「ここに汚れが付かない?」
「何の素材で作るの?」と
活発な意見が飛び交いました。





 


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